「別れ」 もうすぐ卒業・・・。 乱馬は卒業と同時に天道家を出ることになった。 乱馬はいつものように学校へ行く準備をして、玄関に座って靴を履く。 それを後ろから眺めるあかね。 この姿も、もう見れなくなる・・・。 靴を履いて、玄関を開けて出て行く乱馬。 それを見送ると、あかねは小さくため息をつく。 どうしても離れることになっちゃうのかな・・・・。 あかねは少し泣きそうになるのぐっと我慢して上を向く。 「笑顔・・・笑顔」 そうつぶやくと、あかねも準備をして玄関を出た。 |
「別れ」 第2話 学校へ向かっていると、先に出た乱馬の後ろ姿を見つける。 声をかけようかとしたあかね。でも言いかけて止めた。 少し後ろを黙ったままついて歩く。 時々、フェンスや空を眺める乱馬を見つめながら一定の距離を保ったまま歩く。 乱馬はあかねに気づいていない様子で歩き続けている。 乱馬は家を出ることをどう思っているんだろう・・・。 修行だから乱馬は嬉しいのかな。もっと強くなりたいって言ってたし・・・。 でも3年だよ・・・。長すぎるよ・・・。 あかねの足が止まる。少しずつ離れる乱馬。 いかないで・・・・ あかねは心の中で叫ぶ。 でも、その声は乱馬には届かない。 乱馬の姿が見えなくなる。 乱馬が家を出て行くことが決まってからこれ以上、自分の気持ちを育てたら 駄目だと思っていたのに・・・・どんどんと好きになっていった。 苦しい・・・。 好き過ぎて・・・。 嫌いになれたらいいのに・・・・。 |
「別れ」 第3話 いつのまに、乱馬をこんなに好きになってたんだろう。 許嫁と紹介されたときは本当に嫌いだった。 それからしばらくは自分勝手な乱馬にいつもイライラしてた。 でも少しずつ惹かれていった。 今はもう隠しきれない位に育った気持ち。 乱馬は私の事、どう想ってるんだろう・・・。 家を出て行くことが決まってから、乱馬とはあまり話していない。 何か話さなきゃ・・・そう思って部屋に行くと、乱馬はいつも家の荷物を整理してた・・・。 そんな姿を見ると、声を掛けられなかった。 何でなにも言ってくれないんだろう。ケンカになってもいい・・・何か言ってほしい・・・。 学校に着くと、乱馬が友達と楽しそうに笑って話している。 乱馬がいなくなることをクラスのみんなは知らない。 いつもそう。一人で勝手に決めて勝手に行動して・・・。 みんなにちゃんとサヨナラしなくてもいいわけ?私にだって・・・・。 そう思うと涙が出そうになる。 涙を一生懸命こらえていると、自分の席へと戻る乱馬があかねに気づく。 「どうした?」 下を向いて少し震えているように見えるあかねに心配そうに声を掛ける。 だめだ・・・。 我慢していた涙が一気に出てしまう。 「うわっどうしたんだよ!!」 乱馬がオロオロし始める。 「あー乱馬があかねを泣かしてるー!」 友達が乱馬をからかう。 「ばか!俺は何もしてねーよ!」 そう言って、あかねの手をとって、慌てて教室を出る乱馬。 一気に屋上に上がって、あかねを座らせた。 「ったく・・・どうしたんだよ」 乱馬も、なかなか泣きやまないあかねの前に座る。 あかねは涙を一生懸命、ぬぐって乱馬をじっと見つめる。 ドキ・・・ 「な・・・なんだよ・・・」 乱馬が少し赤くなってあかねから離れる。 その時、あかねの手がそっと乱馬の手に触れた。 |
「別れ」 第4話 離れた乱馬の手に、そっと触れるあかね。 「な・・・どうしたんだ??」 乱馬がいつもと違うあかねの様子に、戸惑う。 「本当にいなくなっちゃうんだなって思って・・・」 あかねがうつむいたまま、ポツリと言った。 「いなくなるって・・お・・・お前、喜んでたじゃねぇか!」 恥ずかしさから、からかうように話す乱馬。 「ばかっ・・・本心な訳ないでしょ!」 あかねはそう言うと、そのまま乱馬の胸に飛び込んだ。 ドサッ・・・ 「ちょ・・・おい!」 自分の胸で泣くあかねに、どうしていいのか分からず、オロオロする乱馬。 でも、少し深呼吸をして、抱きついているあかねの肩にそっと手を置くとあかねの体を、自分から離した。 そして、自分の前に向かい合うように座らせると、真剣な表情で、あかねを見つめた。 「俺さ・・・正直、お前と離れるの嫌だ・・・」 あかねは涙を拭いながら少しドキッとして、驚いた表情をする。 「でも、俺はもっと強くなりたい・・・」 そう言った乱馬の表情はとても大人びていて、あかねの胸は更にドキドキとはやくなる。 「だから、俺は天道家を離れるよ」 乱馬はそう言って、立ち上がった。 他に言うことはないの??あかねは心の中で叫んでいた。 もうすぐ離れ離れなのに・・・・。 でも乱馬はあかねを立たせると、教室へと向かおうとしていた。 「わかった・・・・」 あかねはそう答えることしか出来なかった。 自分の気持ちを伝えることも、乱馬の気持ちを知ることも出来ないまま、離れていくんだ・・・。 そう思ったら、今まで一緒にいた時間ってなんだったんだろう・・・。何だかバカらしくなってきた。 素直になろうって思った気持ちもどっかにいってしまった・・・。 「勝手にどこでも行きなさいよ!!」 いきなりそう一言、言うとあかねは先に教室へと向かって走っていった。 その後ろ姿を見つめる乱馬。 「ごめんな・・・」 「これでいいんだよ・・・・」 そう一人でつぶやくと、乱馬も教室へと向かっていった。 卒業まであと2日・・・。 一緒にいれる時間はもうないのに・・・・。 あかねは教室に向かう途中にトイレに駆け込むと、鍵を閉めて、そのまま泣き崩れた。 「ばか・・・ばか・・・・」 乱馬が教室についても、あかねの姿はなかった。 |
「別れ」 第5話 教室を見渡しても、あかねの姿がないことに気づいた乱馬。 そして、またすぐに教室を出る。 校舎中を探しても見つからないあかね。 すると、休憩の終わりを知らせるチャイムが鳴り始める。 「ったく・・・どこ行ったんだ・・・」 乱馬はキョロキョロと辺りを見渡す。 「乱馬くん・・・」 振り返ると、あかねの友達が立っていた。 「もしかして、あかねを探してる?」 「ああ、どこいいるのか知ってるのか?」 乱馬があかねの友達に詰め寄る。 「多分、あかねだと思うんだけど・・・泣いてたみたいで、私もそっと出てきたの・・・」 「・・・そうか・・・」 「チャイムも鳴ったし、私は帰るね!・・・乱馬くんはあかねについててあげてよ・・・」 そう言って、友達は走って教室へと戻る。 女子トイレに入るわけにもいかず、乱馬は少し離れたところに座ってあかねを待ち続けた。 バタン・・ その時、ドアが開いて、あかねが赤い目をこすりながら出てくる。 「あかね!」 グッと乱馬があかねの腕をつかむ。 「乱馬!?」 あかねが驚く。 「泣いてたのか・・・」 乱馬があかねの赤い目に優しく触れる。 「泣いてなんか・・・」 そう言いながらも、また涙が出そうになるあかね。 それをグッと我慢してあかねは乱馬の手をはらって、離れる。 「なっ何だよ!何か言いたいことあるなら言えよ!」 あかねのそんな態度に乱馬が少しカッとなって言った。 「うるさい!あんたが何も言わないから、私も何も言わない!」 あかねは涙目になりながら、乱馬をキッと睨む。 「ったく・・・本当にお前は可愛くねえな!!」 乱馬は思わずそう叫ぶ。 「ええ、ええ、そうですね!あんたがいなくなって、せいせいするわ!!」 あかねはそう言って、教室とは違う方向へと走って行った。 ドンッ 思い切り壁に拳をあてる乱馬。 「何で・・・こうなっちまうんだよ・・・」 「やっぱり、俺とあかねはダメなのか・・・このまま別れるのかよ・・・」 そう言ってもう一度、壁を思い切り殴る。 乱馬はそのまま教室へ戻ると、黙って荷物を持って教室を出ようとする。 「おい!早乙女!どこ行くんだ!」 先生が乱馬を止める。 「すみません・・・体調が悪いので帰ります・・・」 乱馬はそう言って教室を出た。 「まったく・・・高校生、最後の授業だと言うのに・・・」 先生がはーっとため息をつくと、授業を続ける。 「このまま・・・出て行こうかな・・・」 乱馬はそうつぶやいて、校門を出ると今にも雨が降りそうな雲を見つめた。 |
「別れ」 弟6話 校門を出て、一人家へと向かう乱馬。 帰り際に、店に寄って買い物をすると、そのまま家へと足早に帰る。 「よし・・・」 家に帰ると、買ってきた便箋を出して、机に向かって少し考える。 「あかねへ・・・・」 乱馬はあかねへの手紙を書き始める。 あかねへ 今まで、色々と悪かった 俺はお前が・・・ そう書きかけて、筆を止める。 少し考えると、ぐしゃっぐしゃっと書いていたものを丸めて捨てる乱馬。 そして、書き直したものをあかねの机の上に置くと、荷物をまとめて玄関を出る。 「お世話になりました・・・」 外に出て天道家を見ると、深々と頭を下げて、門をくぐった。 乱馬が出て行ってから、天道家の電話が鳴り続けていた。 「はい、はい・・・・」 少しして、かすみが買い物から帰ってくると、電話へと走って受話器をとる。 「はい、天道です」 「お姉ちゃん?!乱馬いる?!」 電話を出ると、友達から、乱馬が家に帰ったと聞いたあかねが慌てた様子でかすみに聞いてくる。 「え・・・私は帰ってきたばかりだし、お父さん達は今日は朝から出掛けてるのよ・・・」 かすみはそう言いながら、玄関に靴がない事を確認すると、あかねに続けて言った。 「ちょっと待ってて・・・見てくるから」 受話器を置いて、乱馬の部屋へと向かう。 少しして、電話に戻るかすみ。 「お姉ちゃん、どうだった?」 あかねが聞くと、かすみは少し言いづらそうに、あかねに言った。 「いなかったわ・・・・それに・・・荷物もないみたいなの・・・」 それを聞いてあかねの心臓がはやくなる。 「わかった・・・すぐ帰る!」 あかねは電話を切ると、家へと走る。 「ばかっ!・・・勝手に出て行ってたら許さないんだから!」 あかねはそう言いながら、走り続ける。 バンッ 玄関を勢いよく開けると、乱馬の部屋へと向かう。 ガラッ・・・ すっきりとした部屋。そして大きなリュックがなくなっていた。 あかねは力が抜けたように、ペタンとその場に座り込む。 「あかね・・・」 かすみが座り込んでいるあかねにそっと優しく触れた。 「あのね・・・もしかしたら、あかねに手紙を書いたのかも・・・乱馬くんの机に開いた便箋があったから・・・」 それを聞いて、バッと立ち上がると自分の部屋へと走るあかね。 部屋に入って机を見ると、手紙が置かれていた。 どんどんとはやくなる心臓を少し落ち着かせて、手紙を開く。 あかねへ 今まで色々と悪かった。 ごめん 元気でな たった3行の手紙。 「何なのよ・・・」 あかねの目から大粒の涙がこぼれる。 「何なのよ・・・何なのよ・・・ばかっ・・・・」 止まらない涙。そして押し寄せる後悔。 あかねは手紙を握りしめる。 「ごめん・・・ね・・・・」 「ごめんね・・・・」 あかねはそう言いながら、床に泣き崩れた。 (続く) |
「別れ」 弟7話 今にも降り出しそうだった雨がポツポツと空から落ちてくる。 「降り始めたな・・・・」 乱馬は足早に駅へと向かった。 「ドアが閉まります・・・」 アナウンスと同時にギリギリに電車に乗り込む乱馬。 あかね・・・もう帰ってるかな・・・。 ドアの近くに立ったまま、通り過ぎる景色を見ながら、あかねのことを考える。 自分の気持ちを素直に言えばよかったかな・・・。 乱馬は本当の想いを手紙に書かなかったことを少し後悔した。 そのまま考えながら外を見続けていると、いつの間にか自分以外、誰もいなかった。 乱馬は足もとに置いていた荷物を持って、座席へと移動する。 座席に座ると大きく息をはいて、うつむいた。 「3年か・・・長いな・・・・」 乱馬はそうつぶやくと、うつむいたまま目を閉じた。 「あかね・・・大丈夫なの?」 部屋から出てこないあかねを、なびきが心配する。 「・・・大分、落ち着いたみたいなんだけど・・・」 かすみは夕飯の用意をしながらかすみに言った。 「まさか卒業前に乱馬くんがいなくなるとは・・・・」 早雲は腕を組んで大きくため息をつく。 「早乙女くん・・・何も聞いていなかったのかね?」 何もなかったように御飯を食べている玄馬に早雲が詰め寄る。 「いや・・・昨日はなにも・・・・」 玄馬はそう言って、御飯を急いで食べ終えると、自分の部屋へと向かった。 「それにしても急よね・・・・」 「そうね・・・・」 そして、そのままみんな黙り込んだ。 コンコン・・・ 「・・・誰?」 部屋のドアをノックする音に、起きあがるあかね。 「ちょっといいか・・・」 「おじさま?」 あかねは部屋のドアを開ける。 「わしもこれから乱馬を追うことにした・・・・で・・・何かあいつに伝えることがあればと思ってな・・・」 玄馬が少し聞きづらそうに、あかねに聞いた。 「じゃあ・・・・これを渡してください」 「え・・・ああ・・・・」 そう言ってあかねから小さな紙に包まれた物を渡される。 「これを渡せばいいんだね・・・」 「はい・・・お願いします」 玄馬は受け取った物を大事そうにしまうと、玄関を出て行った。 「これでいいんだよね・・・・」 あかねはそう言って少し微笑むと、また部屋へと入っていった。 (続く) |
「別れ」 弟8話 ドサッ・・・ 乱馬は終点で下りると、荷物を置いて駅の椅子に座る。 「もうバスないよな・・・」 駅の時計を見上げながら、時刻表を取り出して見る。 「どっかで野宿だな・・・・」 そうつぶやいて荷物を持って立ち上がると、乱馬は駅を出て行く。 「・・・・・・・」 その頃、天道家では、部屋から下りてきたあかねが、家族に自分の思いを話していた。 「前から決めてた事なの・・・言うのが遅くなってごめん・・・」 あかねはそう言って、うつむく。 「・・・わかった・・・・お前が決めたことだったら、お父さんは止めないよ。好きにしなさい・・・・」 早雲が腕を組んだまま、そう言った。 「お父さん・・・ありがとう・・・」 あかねは顔をあげると、泣きそうになるのを我慢しながら笑った。 「明日の卒業式・・・いい思い出にするんだぞ・・・乱馬くんの分もな・・・」 「うん・・・じゃあ、そろそろ寝るね」 あかねは立ち上がると、部屋へと戻っていった。 「お父さん・・・大丈夫?」 あかねが出て行ったと同時に、おいおいと泣き始める早雲を、かすみがなぐさめる。 「行っちゃうんだ・・・あかね」 なびきも寂しそうにポツリと言った。 「そうね・・・でもあかねが決めたことだから・・・」 かすみはそう言って、お茶を入れると二人の前に出した。 「早乙女親子も出て行ってしまったし、あかねもいなくなると寂しくなるな・・・・」 また、おいおいと泣き始める早雲。 「えと、これもいるよね・・・」 あかねは部屋で荷物をまとめていた。 その時、机の中から写真を見つける。 二人で並んで撮った結婚式の写真。 本当に結婚した訳じゃないけど、何かとってもくすぐったくて、嬉しくて、忘れられない思い出。 いつかこれが本当になったら・・・って心の何処かでそう思ってた。 でも、もう叶わないかもしれないな・・・。 その写真を大事そうに手帳にしまうと、それを抱きしめて目を閉じて、今までの事を思い出す。 色んな事があったな・・・。ケンカが多かったけど。 ありがとう乱馬。 そして次の日の朝がきた。 「いってきます」 あかねは笑顔で玄関を出て行った。 「いってらっしゃい」 みんながあかねを見送った。 (続く) |
「別れ」 弟9話 学校の前に着くと、校舎を見つめる。 この学校に通うのも今日が最後。 少しの間、見つめると校舎へと入るあかね。 「おはよー」 「おはよう」 いつものように挨拶がとびかう。 でも、本当に最後なんだよね・・・。 「・・・あかね・・・乱馬くん・・・やっぱり参加できないの?」 席に座ったあかねにクラスメイトが集まる。 「うん・・・」 あかねがそう一言答えた。 「まさか、乱馬がいなくなるなんて・・・」 あかねから乱馬の話を聞いて、みんなが少し暗くなる。 「みんな!最後なんだから笑って、笑って!」 あかねが笑顔でみんなに言った。 「うん・・・」 そして、体育館へと集まる生徒達。 卒業、おめでとう。乱馬・・・・。 式が終わって教室に戻ると、乱馬の席に座って顔を伏せると、目を閉じた。 そして卒業式から2日が経ち、みんな新しい道へと向かって行った。 「おーい!乱馬ー!」 玄馬がやっと乱馬のいる場所に着く。 「こら・・・遅すぎねえか?」 乱馬がじろっと睨みながら玄馬に言った。 「いや〜色々とあって」 玄馬がハッハッハッと笑いながら言った。 そんな玄馬をあきれ顔で見ながら、修行に戻ろうとする乱馬。 「おお、乱馬!これをあかねくんから預かったぞ」 ドキ・・・ その名前に体が大きく反応する。 「あ・・・あかねに?」 振り返ると、玄馬から紙袋を渡される。 渡された物を受け取ると、誰もいない場所へと向かって、紙袋を開けてみる。 中にはイニシャル入りのリストバンドと手紙が入っていた。 「これ、あかねが縫ったのかな・・・」 あきらかにぶかっこうなイニシャルにふっと笑う。 そして、手紙を開く。 読み終えると、玄馬のもとへともの凄い勢いで走る。 「こら親父!!これをあかねから、いつ受け取った!?」 もの凄い剣幕で玄馬に言った。 「え・・ああ・・・お前が出て行った日に受け取った」 それを聞いて、グっと玄馬の胸ぐらを掴むと、睨みつける。 「何日かかってんだよ・・・今日、これを見たって遅いんだよ!!!!」 そう怒鳴ると、玄馬を突き放して、走り出す乱馬。 バカ・・・・あかね!! 「すみません!電話貸してもらえますか!?」 世話になっている修行場の主人に駆け寄る。 「え・・・ああ」 電話を借りるとすぐに天道家へと電話をかける。 「もしもし、俺だけどあかねは!?」 電話を出た、なびきに乱馬が聞いた。 「乱馬くん?・・・・あかねならもう出たわよ・・・」 「どこに!?」 「行き先は私達も知らないの。落ち着いたら連絡するって・・・」 「・・・・そうなんだ・・・・。えと・・・・あかね、昨日どっかに出掛けたか?・・・」 そう聞くと受話器を持っている手に力が入る。 「え・・・うん。でも帰ってきたときに様子が変だったけど・・・」 「そっか・・・わかった・・・」 乱馬はそう言って、電話を切ると走り始める。 涙が出そうになるのを必死にこらえながら走り続けた。 ごめん・・・あかね。 そう思った瞬間に涙が止まらなくなった。 (続く) |
「別れ」 弟10話 乱馬へ 私は卒業したら家を出るの 何度も言おうと思ったんだけど、なかなか言えなくて・・・ だから最後に色々と話したかった・・・ でも最後まで素直になれなくてケンカして終わったけど・・・ やっぱり会いたい 卒業式が終わった次の日の夜に、あの公園で待ってるから・・・ おじさま、間に合うかな・・・? 卒業式の日には着くっておじさまが言ってたから、大丈夫かな? 急だけどごめんね・・・ 待ってるから・・・ずっと・・・ あかね もう一度、あかねの手紙を読み直して、乱馬が顔を伏せる。 「くそ・・・俺だって・・・」 そう思うとまた涙がこみ上げてきた。 それをこらえるようにバッと顔を上げる。 「もう会えないのか・・・?・・・」 そうつぶやいて、顔を上げたまま目を閉じる。 「乱馬!ここにいたのか・・・」 その時、玄馬が名前を呼びながら駆け寄ってくる。 「何だよ・・・」 慌てて赤くなっている目をこすると、玄馬に背を向けながら言った。 「あかねくんから預かった物ってなんだったんだ?」 「親父には関係ねえだろっ・・・!」 スクッと立ち上がると、玄馬の傍から離れる。 「はー・・・何かしたかのー・・・」 乱馬の少し後を付いていきながら、玄馬がはーっとため息をついた。 「くそっ!!」 修行場に戻ると、がむしゃらに拳を木に打ち付ける。 流れている血にも気づかないまま、打ち続ける。 「こら・・!!もうやめろ!!」 乱馬の後を追ってきた玄馬が腕を持って止める。 「離せ!!!」 振り払おうとする乱馬。 「落ち着け!」 そう言って、玄馬は思い切り乱馬の顔を殴った。 乱馬は倒れたまま、動かない。 「乱馬!?」 玄馬が慌てて顔を覗き込む。 「見んな!!」 乱馬は流れている涙を隠すように、顔を地面に伏せた。 「もしかして・・・わしのせいか・・?あかねくんから預かった物・・・大事な物だったのか・・?」 伏せたまま、動かない乱馬に聞きながら、傍に座る。 「悪かった・・・」 乱馬の返事も待たないまま、玄馬はすぐに謝る。 それを聞いて、乱馬が涙を拭って、玄馬に背を向けたまま座る。 「・・・親父のせいじゃねえよ・・・」 自分を落ち着かせると、乱馬が振り向いて玄馬に言った。 「乱馬・・・とりあえず病院に行け・・・・」 玄馬は力無く座っている乱馬の前に座ると、血で赤く染まっている乱馬の手を布で巻いた。 「・・・・・ああ・・・・」 乱馬はゆっくりと立ち上がると、山を下りていく。 病院に着くと、受付をすまして待合室の椅子に座る。 血のにじんだ布を見て、深くため息をつく乱馬。 あかねに会いたい・・・・。 今はその気持ちでいっぱいだった。 「早乙女さん」 名前を呼ばれて立ち上がる。 診察室へと向かう途中、ふと顔を上げると、乱馬の足が止まる。 心臓が一気に高鳴る。 (続く) |
「別れ」 第11話 診療室に向かう途中、足が止まる乱馬。 「あ・・・かね・・・?」 一瞬、目を疑った。でも間違いなくあかねだ・・・。 ノートを片手に真剣な表情で何やら話を聞いている。 「それじゃあ・・・今日はここまで」 話をしていた人がそう言うと、あかねがノートを見ながらこっちへと歩いてくる。 まだ、俺には気づいていない・・・。 どんどんと高鳴る心臓。 その時、ふいにあかねが顔を上げる。 !! 「乱・・・馬・・??」 驚いた表情であかねが乱馬を見る。 「あ・・・・手紙・・・今日もらって・・読んで・・・・悪かった!!」 乱馬は自分でもびっくりするほど動転していて、言葉がまとまらない。 そんな乱馬を見て、あかねも少し驚く。 「初めて見た・・・こんな乱馬」 そう言って、クスッと笑う。 そんなあかねを見て乱馬は少しホッとして落ち着いてきた。 「気にしないで・・・」 あかねは乱馬にそう一言、言うと右手を差し出した。 ? 乱馬がキョトンとしてあかねの右手を見る。 「握手よ、握手!私、実は看護士を目指してるの。だから・・・」 あかねがもう一度、手を差し出す。 乱馬は少し不思議そうな顔をしながら、その手をしっかりと握ると、ゆっくりとお互い手を離した。 「・・・看護士なんて・・・不器用なお前になれんのか??」 乱馬はまだ高鳴る心臓をまぎらわせるように、あかねをからかった。 「・・・うん。頑張る・・・」 いつもなら怒るはずのあかねが、真剣な表情で答えた。 「そっか・・・・」 ・・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 少し沈黙が続く。 「あ・・・あの俺に話しがあったんだよな・・・?」 少し聞きづらそうに乱馬が沈黙を破るように切り出した。 「ううん・・・・もういいの」 あかねはそう言って少しうつむくと、顔を上げて乱馬の顔をじっと見る。 「な・・・・何だよ・・・・」 「ありがとう・・・」 「は??」 「だから・・・・今までありがとう」 あかねは笑顔でそう言った。 でも、目は赤くなってた・・・。 「何か・・・お前らしくないぞ・・・」 乱馬は今度はさっきとは違う、不安な心臓の高鳴りを感じていた。 「天道さん!」 その時、あかねを呼ぶ声が。 「あ・・・私もう行かなきゃ・・・今日はここに見学と勉強に来たの・・・」 「そっか・・・」 自分から離れそうになるあかねに、また会えるか・・・? そう言いたいのに、言葉が出ない乱馬。 「乱馬!」 うつむいている乱馬を呼ぶあかね。 「さっきの・・・お別れの握手だから・・・・」 その言葉に、乱馬の胸がギュッと締めつけられる。 「まて・・・あかね!!どういうことだ!」 とっさにあかねの腕を掴む。 あかねは乱馬を見ないまま、手を振り払うと走って乱馬から離れた。 「あかね・・・・?・・・」 乱馬はその場に立ちつくす。 (続く) |
「別れ」 第12話 お別れって何だよ・・・。 乱馬はその場に立ちつくしたまま、あかねが走っていった方向を見る。 しかし、あかねは人混みに消えて、姿が見えなくなっていた。 「早乙女さん!」 名前を呼ばれて、はっとする乱馬。 「先生が診察室でお待ちですよ」 なかなか来ない乱馬を看護師が呼びに来ていた。 「あ・・・すみません・・・」 乱馬はあかねの姿を探しながら、診察室へと向かった。 これでいいんだよね・・・。 あかねは歩きながら、自分にそう言い聞かせていた。 3年も離れて平気なくらい、強くて深い絆でもないし・・・。 乱馬が私のこと、どう想ってるのかも分からないし・・・。 このままじゃ、何か自分の気持ちに潰されそうだし・・・・。 だから、諦めるのが一番良い・・・・。 本当の気持ちを言えなかったけど・・・。 あかねは二階から乱馬が立っていた場所を見つめる。 「天道さん、今度はこっちだって」 「あ・・・うん」 あかねは呼ばれて、その場から離れる。 さよなら・・・乱馬。 乱馬は診察が終わると、あかねを探し始める。 でも結局、会うことは出来なかった・・・・。 天道家に電話をしても、あかねは家族にも居場所を知らせていなかった。 そして・・・いつの間にか年月が経ち、修行場を出ることになった乱馬。 「乱馬、これからどうするんだ?」 玄馬にそう聞かれると、乱馬は空を見上げながら、深呼吸をした。 「俺、天道家には帰らねえ・・・」 「乱馬!?何言ってるんだ!?天道家を継ぐ約束じゃろ!」 玄馬が慌てて、乱馬の腕を掴む。 「俺とあかねが結婚しないんだったら、継ぐ理由はないだろ・・・」 乱馬はそう言って、少し悲しい表情を浮かべる。 「お前・・・あかねくんのこと・・・どう想ってるんだ?・・・」 そんな乱馬を見て、玄馬が真剣な表情で聞いた。 「・・・・わからねえ・・・・離れる前に想ってた気持ちが、こんだけ離れたら分からなくなった・・・・」 乱馬はそう言って、玄馬の手を放すと歩き始める。 「まて乱馬!!」 玄馬が後を追いかけるようについていくと、前から早雲が凄い勢いで涙を流しながら走ってくる。 「乱馬くーーーーーん!!!!」 「おじさん!?」 乱馬が驚いて、その場に倒れ込んだ早雲に駆け寄る。 「あ・・・・あかねがーーーー・・・・」 早雲がオイオイと泣きながら、乱馬にしがみつく。 「あかね!?どうかしたのか!?」 乱馬が早雲に詰め寄る。 「家に帰ってこないって連絡があったんだーーーー」 そう言うと、またオイオイと泣き始める早雲。 「・・・・そっか・・・」 それを聞いて乱馬がスッと立ち上がった。 「乱馬くん・・・?」 「おじさん、ごめん。俺も帰らないってさっき親父に言ったとこなんだ」 乱馬がそう言うと、早雲が玄馬に詰め寄る。 玄馬は黙ったまま頷く。 「じゃあ・・・俺もう行くから・・・本当ごめんな。おじさん・・・」 乱馬は少しうつむいて、走って二人の元を離れた。 「・・・・あかねも乱馬くんも・・・これでいいのか・・・?・・・」 早雲が走り去る乱馬を見ながら、力無く言った。 玄馬は何も言わないまま、早雲の傍に座って乱馬を見送った。 俺たちは、本当に別れることを選んだ。 今までは3年後に会ったらもしかして・・・って淡い期待を持ってたけど・・・。 これで本当に無くなったんだ・・・・。 本当に・・・・・。 お別れなんだ・・・・。 あかねもそれを選んだ。 だから、もう本当に・・・会えないのかもな。 乱馬はそう思うと、涙が込み上げてきた。 でも、それをグッと我慢して乱馬は歩き続けた。 (次回、最終回です) |
「別れ」 最終話 前編 あれから、どれくらいの年月が経ったんだろう・・・。 まだ、忘れられないなんて・・・俺も未練ありすぎだな・・・。 「乱馬!早く」 急に手をとられて、ずるずると車に乗せられる。 「大丈夫だって・・・ちょっと腕を痛めただけですから・・・」 乱馬は助手席に座りながら、運転席の女性を見る。 「ダメよ!乱馬は大事な人材なんだからね」 そう言って、女性は病院へと車を走らせた。 「さっ早く!」 女性に手をとられて、病院の中へと入る。 病院の中に入ると、乱馬はゆっくりと病院内を見渡した。 今まで、色々な病院をまわった・・・。 あかねがいるかもって・・・そんな期待をもって・・・。 でも、あかねを見つけることは出来なかった。 けど、もし会えたってどうすることもできないよな・・・・。 「ちょっと!乱馬、早く」 病院を見渡していると、また手をとられて、ずるずると待合室に連れて行かれて、椅子に座らされる。 この女性は今お世話になっている道場の、若奥さんの咲さん。 本当、強い女性で頭が上がらない。ここら辺じゃ、ちょっとした有名人だ。 しかも、あかねに似ていて、時々ドキッとしてしまう。 「早乙女さん」 呼ばれて咲と診察室へと向かう。 「少し安静にしていれば大丈夫ですよ。奥さん」 先生がそう言うと咲が立ち上がって、先生に近づく。 「そうならいいのよ。早く治る薬お願いね!」 「はあ・・・奥さんにはかなわないな・・・まあ、念のために明日も来てくださいね」 先生も、咲とは以前からの知り合いらしく、頭が上がらない様子だった。 「ありがとうございました」 乱馬はそう言って、咲と診察室を出た。 「あ・・咲さん、先に帰っててください。今は忙しいし、俺、運動がてら歩いて帰るんで」 「そう?・・・・わかった。ゆっくり帰ってきていいからね」 そう言って、咲は病院から出て行った。 「ねえ・・・さっきの人、格好良かったね!」 お昼休みに看護士達がお弁当を食べながら、騒いでいた。 「また、そんな話ばっかり」 そこに、あかねがお弁当を持って席に座る。 「天道さん、今回はかなりレベル高かったんだって」 「あっそ・・・」 あかねは興味なさそうにお弁当を食べ始める。 「もう〜明日も来るって言ってたし・・・楽しみ」 「最近、若い人少なかったから目の保養よね」 そんな、話を聞きながら、あかねがふーっとため息をつく。 「名前なんだっけ?えーと・・」 「早乙女乱馬。変わった名前だったから覚えてる」 ブハッ その名前を聞いた瞬間に、あかねが吹き出す。 「ちょっと〜天道さん、どうしたの??」 「な・・・何でもない・・・ごめん」 まさか・・・。 「でも、奥さんいるみたいだし、残念・・・」 え?? 「本当なの?」 そうなの・・・? 「だって、先生が一緒に来てた人の事、奥さんって言ってたよ」 乱馬に奥さん??・・・・ みんなの会話を聞きながら、自分でも体が震えているのが分かった。 震えを止めようとしても、自分を落ち着かせようとしても、勝手に流れる涙。 「天道さん!?」 「あ・・・ごめん、ちょっと体調が悪くて・・・」 そう言って、あかねはお弁当を持って、部屋を出る。 大好き・・・。 やっぱり好き・・・・。 忘れることなんて・・・出来ない・・。 抑えていた気持ちが一気に溢れだした。 もう・・・どうすることもできないのに・・・・。 「さてと・・・ぶらぶらして帰るか・・・」 診察代を払うと、歩いて病院を出て行く乱馬。 「お・・・ここは行ったことがなかったな・・・」 高台にある病院の周りは遊歩道になっていて、綺麗に整備されていた。 そこをのんびり歩いてみる。 聞こえるのは鳥の声と、風で揺れる木々の音。 乱馬はベンチに座ると、揺れる木の葉をじっと見つめていた。 「乱馬・・・?」 その声にハッと立ち上がる。 「あ・・・かね・・・」 自分でも情けないくらい声が震えてる。 心臓はバクバクで、何だか緊張しすぎて気持ち悪い。 でも、気づいたら抱きしめてた。 思い切り、あかねを抱きしめていた。 「・・・ちょっと・・・奥さんがいるんでしょ・・・」 自分の胸の中で、泣きながらあかねが言った。 「は?・・・そんなのいないぞ・・・?」 思いもよらない言葉に、乱馬があかねの顔を見る。 「だって・・・今日・・・」 あかねは言葉にならない様子で、泣きじゃくっていた。 「あ・・・・ああ・・・もしかして咲さん?俺が世話になってる道場の奥さんだよ」 あかねはそれを聞いて、一気に力が抜ける。 そんな、あかねをギュッともう一度、強く乱馬は抱きしめた。 やっと・・・やっと見つけた。 もう離したくない・・・。 あかねが嫌だって言っても、俺は傍にいたい。 会って分かった。やっぱり・・・俺はあかねが好きだ。 「俺・・・あかねの傍にいたい・・・」 乱馬がそう言うと、あかねが驚いた表情で、乱馬を見た。 「ダメ・・・か?」 乱馬は腕を少しゆるめて、あかねに聞いた。 「・・・・バカ」 「それってダメってことか?」 「大バカ・・・・言うのが遅い!」 あかねはそう言って、乱馬に飛びつくように抱きついた。 「あかね・・・」 乱馬は優しく微笑むと、あかねの髪を優しく撫でる。 「・・・乱馬・・・好き・・・大好き・・・」 そう言ったあかねの手にきゅっと力が入る。 乱馬はその言葉に、嬉しそうに微笑むと、抱きついているあかねの手を自分の首からそっと離した。 そして、あかねの唇にそっとキスをした。 「ら・・ん・・・」 驚いたあかねが名前を呼ぼうとするのを、また唇でふさぐ乱馬。 「俺も・・・好き・・・」 ゆっくりと唇を離して、恥ずかしそうに乱馬が言った。 そして、乱馬はあかねの手を握ると、ゆっくりと歩き出した。 もう・・・絶対に離さない。 離れない・・・・。 ずっと一緒にいたい・・・。 ずっと一緒にいよう・・・・。 乱馬とあかねは寄り添って歩き続けた。 (終わり) ![]() |