メモを片手に、書いてある場所へと向かう。


「早乙女道場・・・」



着いたものの、道場の前で立ったまま、動けないあかね。




「何かご用ですか?」



後ろから急に話しかけられビクッと反応するあかね。





「あ・・・す・・・すみません!早乙女先生に用事が・・・」



そう言いながら、振り返ると綺麗な女性が立っていた。




「まあ・・・乱馬に。さあ、どうぞ」




女性に案内されて、家の中へと入る。




「乱馬。お客さんよ」



女性は先に家に入ると、乱馬を呼びに奥の部屋へと向かった。




あかねは玄関に入ったものの、緊張で鞄を持っている手に力が入る。




「お客さん・・?」




奥の部屋から聞こえたその声に、あかねの顔が一気に赤くなる。



近づいてくる足音に、どんどんと顔が赤くなる。



落ち着いて!!お願い!!



そう自分に言い聞かせる。





「天道?」



驚いた乱馬が傍に来たときには、あかねはゆでダコ状態・・・。



「どうした・・・?」




幸い、玄関は暗くて赤くなっているのは気づかれていない様子だった。




「あの・・・いや・・・急にいなくなるから・・・どうしたのかなって・・・」




もごもごとあかねが言うと、それを見て乱馬はぷっと笑う。




「ちょっと出るか・・・」




後ろでこそこそと見ている女性に気づき、乱馬はあかねを連れて家を出た。




「あの・・・もしかして先生のお母さん?」




「え・・・ああ・・・」




少し恥ずかしそうに答える乱馬。




えと・・・・先生に会って、何を言いたかったんだっけ・・・・。



一緒に歩きながら、あかねが考え込む。





「どうした??」




乱馬があかねの顔を覗き込む。




「え・・・いえ・・・」




そう言って、あかねは黙り込む。





「・・・あのさ・・・俺と天道の許嫁の話ってどうなったんだっけ?」




「え・・・先生が、断ったんじゃ・・・」




あかねが乱馬をチラッと見て、すぐに下を向いた。




「あー・・・そういえば、あれから天道のお父さんと話してないなって思って・・・・」




乱馬はそう言うと、うーんと伸びをする。





「明日でも話にいってもいいか?」




乱馬の言葉にバッと顔を上げるあかね。




「このままじゃ、あれだろ。天道だって親の勝手に決めた許嫁と結婚するの嫌だろ」




乱馬はそう言うと、あかねを見て笑った。




「私は・・・」




「ん??」




「私は嫌です!!」




「ああ・・・だから明日、断りに行くって・・・そんな力一杯言うなよな・・・」




乱馬は腕を組んで、はーっと息を吐く。




「・・・違います!!」




「何が?」




「だから・・・違います!!」




「はあ?何言ってんだ??」




乱馬は訳が分からず、腕を組んだまま、あかねを不思議そうに見る。




「だから・・・先生の許嫁のままでいいです・・・」




ドキ・・・・。




乱馬が驚いた表情でかたまる。




「え・・・」




「だから・・・いいんです!!」




真っ赤になっているあかねを見て、やっとあかねの気持ちに気づいた乱馬。




うわ・・・これは・・・。



何て言うべきなんだ・・・・。



まだ自分の気持ちもハッキリ分かった訳じゃない・・・。



俺は・・・天道を・・・・。




その時、乱馬の裾をあかねがつまんで引っ張った。



「だ・・・黙らないでください・・・」



グッ・・・




!?




その表情を見て、乱馬があかねの手をとると、ギュッと握りしめた。




「先生・・・?」



あかねが話しかけても、乱馬は手を握ったまま、歩き続ける。




何で・・・手なんて握ったんだ??



何で・・・?



・・・・触れたかったから・・・?



そう・・・・天道に触れたかった・・・。



何で・・・・??



愛しい・・・から・・・・。




天道を・・・?




足を止める乱馬。




「先生・・?」




そっか・・・。




乱馬は自分の気持ちに気づいて、思わず笑ってしまう。




「・・・先生・・・?」




あかねが乱馬の顔を下から見上げる。




「これから、天道の家に行っていいか・・・・?」





握っている、あかねの手を自分に引き寄せて顔を近づける。




「お嬢さんをくださいってさ・・・。あ・・・でも古いな・・このセリフ・・・」




乱馬はそう言って一人でまた笑う。




「え・・・?え・・・?」




あかねは状況が飲み込めず、ただ乱馬の後を付いていく。




「俺でいいのか・・・?」




歩きながら乱馬がそう言った時、あかねがハッとした。




「うん・・・いい・・・先生がいい・・・」



あかねは嬉しくて泣き出しそうになるのをグッと我慢して、そう言った。





「あのな・・・もう先生じゃないだろ・・・」




「・・・あかね」




乱馬はあかねの名前を呼んで優しく微笑んだ。




「せん・・・・あ・・・えと・・・・」




「乱馬でいいから・・・あと敬語もやめろよな」




あかねにそう言って、乱馬はあかねの手をひいて天道家へと向かった。





「乱・・・馬・・・」




歩きながら、あかねは恥ずかしそうに名前を呼ぶ。




「ん?」




乱馬が振り返って笑った。




その少し恥ずかしそうな表情が、とても嬉しかった。












(終わり)