明日から春休み。朝から降っていた雨も上がって、良い天気になった。



みんなは荷物をまとめて、嬉しそうに教室を出て行く。



「おい、乱馬!お前、明日からどうすんだ??」



友達の大介が乱馬に近づく。



「うーん・・・・何しようか迷ってるところ」




乱馬はそう言ってカバンを背負って、席を立つ。




「お前さ・・・あかねとの関係、進展したか??キスとか・・・もしかしてそれ以上とか??」




ボソッと大介が耳元で聞いた。




乱馬の顔が一気に赤くなる。




「なっ・・・何言ってんだよ!俺たちは元々、なにもねーよ!!」




そう怒鳴るように言うと、教室を出ようとする。




「でもさ〜もう俺たち18になるわけじゃん?何かあってもいいんじゃないの〜?」




急にひろしが現れて、乱馬にそう言うとニヤニヤと笑う。




乱馬は顔を赤くしたまま、教室を飛び出すように出て行った。




「ありゃ・・・からかいすぎたか??」




大介とひろしが笑い合う。






「ったく・・・あいつら・・・」




ぶつぶつと文句を言いながら、乱馬が家へと向かう。




「あ・・・」




その時、少し前を歩くあかねの姿を見つけて、乱馬は足を止める。




そして、大介とひろしに言われたことを思い出す。




・・・・進展たって・・・今まで何もないし・・・・。これからだって・・・・。




でも、確かに何か物足りない?っていうか、よく分からない気持ちになる時がある。




近づきたいっていうか・・・・あかねが横にいるときに、あと少し・・・・もう少し近づきたいって思うときがある。




乱馬は、あかねの後ろ姿を見ながら小さく息を吐いた。





「あ・・・」




あかねが気配を感じたのか、急に振り返る。





「今日は寄り道しなかったの?」




あかねが乱馬を見ながら、聞いた。





「え・・・ああ・・・。早く帰りたかったから・・・」




乱馬は少し目をそらして、そう答えるとあかねを通り過ぎて、少し前を歩く。






バシャッ





「きゃっ!」




突然、もの凄いスピードで車が通りすぎる。そして、すぐに後ろからあかねの声が聞こえた。




慌てて振り返ると、その車が水たまりを通ったのか、あかねがビショビショに濡れていた。




「大丈夫か??」




乱馬があかねに駆け寄る。




3月といっても、まだ肌寒い。あかねの体は少し震えていた。




「風邪ひいちまうな・・・・早く帰ったほうがいいな・・・」




乱馬はそう言うと、無意識にあかねの手を持って歩き始めていた。





あれ・・・何で手なんか握ってんだ・・・・??





乱馬は急に、握っている手の温もりが恥ずかしくなる。




クシュン・・・




その時、あかねが体をぶるっと震わせながら、クシャミをする。




「寒いのか・・・?」




そう聞きながら、今度は体が勝手にあかねを抱きしめていた。





「・・・・乱馬・・・?」




あかねは驚いた表情で顔を赤らめていた。




うわ・・・何やってんだ俺は・・・・。




抱きしめながら、乱馬は必死に頭を整理しようとしていた。





でも、これは・・・・本能?ってやつか・・・・もしかして・・・。




本能??ってことは、俺はあかねに抱きつきたいって思ってたのか・・・??





色々と考えていると、頭の中がパンク状態になる。





ただ、あかねを抱きしめているのは心地良い・・・。お互いの心音も、あかねの匂いも、とても落ち着く。





あかねも黙ったまま、俺から離れようとしない。




もうちょっと抱きしめててもいいのかな・・・?




乱馬はグルグルと頭の中で色々な事を考えながら、もう一度優しく、あかねを抱きしめなおした。





それでも、あかねは黙ったままで、動くこともせず乱馬に包まれていた。





少しして、ゆっくりと乱馬があかねから離れた。





「寒いよな・・・帰る・・・か・・・」




少し恥ずかしそうに乱馬がそう言うと、あかねはコクンと頷いた。





歩き出した二人の手は、しっかりと握られていた。





何か・・・少しくすぐったいような、嬉しいような・・・そんな気持ちに乱馬の表情が自然とくずれる。




あかねはチラッと乱馬の表情を見ると、下を向いて優しく微笑んだ。










(終わり)