手を握ったまま、動かない乱馬・・・。



「乱馬・・・?」



あかねが、うつむいている乱馬の顔をゆっくりと覗き込むように見た。



「あ・・・・わりぃ・・・・」



乱馬はハッとして手を離した。




「乱馬・・・・何か悩んでるの??」




後ろを向いて、部屋に帰ろうとしている乱馬にあかねは聞いた。




「いや・・・別に・・・悪かったな」




乱馬はそう言って、部屋に入っていった。





何だか最近は二人の関係がどんどん遠くなっているように感じる。




お互い、ケンカすることも減ったし、言葉も選んで、お互いの思っていることも出さなくなった。




そしたら、いつの間にか壁が出来てた。




あかねは乱馬を見送るように、見つめるとハァっと小さく溜息をついた。





ケンカは嫌だけど、前の方が乱馬が近かった・・・。




何だか最近、大人っぽくなったし・・・・。





よく道場で座って考え込んでいる姿も見かける。




聞こうと思っても、今日みたいな返事が返ってくる。




私って信用されてないのかな・・・・それとも力になれないのかな。





あかねはまた溜息をつくと、自分の部屋へと向かう。




そして部屋に入ると椅子に座って頬杖をついて、外を眺める。





少しそのまま考えると、カバンから進路の用紙を取り出す。




真っ白な用紙を見て、あかねは顔を伏せた。




私・・・何になりたいんだろ・・・。




まだ先の事だし・・・・。でも1年なんてあっという間よね・・・・





大学・・・?就職・・・・?・・・・どうしたらいいんだろう・・・・。





お父さんに相談した方がいいのかな・・・。




でもお姉ちゃんはちゃんと自分でやりたい道を見つけてるし。






あかねは顔を上げると、用紙を机の引き出しに閉まった。





乱馬に早く出さないとなんて言っといて、私もまだ出せていない・・・・。





進路は相談して決まるものじゃない。自分で決めるもの・・・。





自分で決めることがこんなに大変だとは思ってなかった。





今まではきっと決められた道を歩いて、みんなの力を借りて進んできた。





これからはそうはいかない。自分で決めた道を歩いていかないといけない。





そう思うと、真っ暗な暗闇にいるような気持ちになる。自分だけ置いて行かれる・・・・。




そんな不安が襲いかかってくる。





あかねはギュッと自分の腕を掴むと、少し震える体を落ち着かせようとする。





助けて・・・・助けて・・・・・・。





ボロボロと涙もこぼれてくる。




怖いよ・・・・。




ガチャッ






「あかね・・・・」




その時、乱馬があかねの部屋へと入ってきた。











「驚いて、あかねが振り向く」





「どうしたんだ!?」





あかねの顔を見て、乱馬があかねに詰め寄った。





「あ・・・・何でもないの」





涙を慌てて拭いながら、あかねが笑った。





「俺のせい・・・?」




乱馬が顔を伏せる。




「違うって・・・ちょっと考え事」




あかねはそう言って、また笑った。





「そっか・・・・」




乱馬はつぶやくように言うと、部屋を出ようとする。





キュッ・・・










その時、とっさにあかねが乱馬の服の裾を掴んだ。





「何・・・?」




乱馬が少し驚いた表情であかねを見る。





「あ・・・・ご・・ごめん!!何やってんだろ・・・」




あかねは真っ赤になって、手を離した。




「・・・・・・・・」




そのまま、二人は動かない。










「あ・・・・あの、本当なんでもないから・・・」





沈黙に耐えられず、あかねがそう切り出した。





「そっか・・・・」




乱馬はそう言うと、部屋を出ようとする。





グイッ・・・








「あのな・・・・・なんでもないんだろ・・・・」





乱馬が振り向くと、あかねがまた裾を握っていた。





「うわ・・・・何やってんだろ・・・本当・・・勝手に・・・・」





あかねは恥ずかしそうに座り込んだ。





「傍にいてほしいのか・・・・?」





乱馬が座り込んだあかねの前に座って言った。





コクン・・・・




あかねが黙ったまま頷いた。









(続く)