・・・・。



誰だ・・・?



「・・・やしゃ・・・」



誰なんだ・・・?



「犬夜叉・・・・」



声のする方へと歩くと、一人の年老いた女性がうずくまっていた。




「おい・・・大丈夫か??」



犬夜叉は女性の腕を掴んで、ゆっくりと立たせる。




「犬夜叉・・・・」




女性は泣きながら、犬夜叉をじっと見つめる。




「どうした?どっか具合悪いのか?・・・住んでるところ、ここから遠いのか?」




犬夜叉がそう言うと、女性は犬夜叉の衣を力強く掴んだ。




「・・・犬夜叉・・・私が分からないの・・・?・・・」




涙を流しながら、見つめる女性の目はとても悲しそうだった。




「私・・・・かごめよ・・・・」



それを聞いて犬夜叉の体が硬直する。




「私は歳をとるのに・・・犬夜叉は半妖だから・・・なんで・・何で人間に・・・」




「人間にならなかったのだ・・・・犬夜叉!!」



顔を上げた女性の顔に犬夜叉が驚いて離れる。




「桔梗・・・?・・」




犬夜叉は睨み付ける桔梗をただ、呆然と見つめる。




「・・・俺は・・・人間にはならない・・・」




犬夜叉はそう言うと、震える体を止めるように自分の腕をギュッと握りしめた。





「許さないぞ・・・犬夜叉・・・・」





「絶対に・・・・」




だんだんと意識が薄れていく・・・。




このまま、俺は・・・・どうなるんだ・・・。




どんどんと暗闇に落ちていくような感覚に、犬夜叉はゆっくりと目を閉じた。




「ちょっと!犬夜叉!!」









耳元で大きな声で呼ばれ、跳ね起きる犬夜叉。




ゆっくりと顔を上げると、かごめが腕を組んで犬夜叉を睨んでいた。




「夢・・・だったのか・・・」




いつもと変わらない、かごめの姿にホッと胸を撫で下ろす。





「何回も呼んだのに、全然起きないんだもん・・・それにうなされてたし」




かごめがハンカチで犬夜叉の額の汗を拭きながら言った。





「そうか・・・」




犬夜叉はそうつぶやくと、かごめの顔をじっと見る。




「何・・・?」




キョトンとしたかごめの表情に、何故か急に胸が締めつけられた。





このままでは、俺たちは一緒にいれない・・・。




俺は半妖で、かごめは人間で、歳をとる早さが違う・・・。





一度、人間になると決めたはずなのに・・・何で俺は、人間にはならないと答えたんだろう・・・。




犬夜叉はかごめを引き寄せると、力いっぱい抱きしめた。





「ちょっと、犬夜叉??」




かごめの匂い・・・。




綺麗な髪、肌、そして優しい目。




現実とは全く違う、夢の中のかごめが頭から離れない。




それを消し去るように、かごめを・・・今のかごめを感じていたかった。





「なあ・・・かごめ・・・・俺は・・・人間になった方がいいんだよな・・・」




かごめは背中に触れている犬夜叉の手が少し震えているのを感じながら、犬夜叉を優しく抱き返す。





「犬夜叉・・・私はどっちでもいい。今のままでも私はいいから・・・。その代わり長生きするからね!お婆ちゃんになっても離れないでよ」




かごめはそう言うと、クスクスと笑って、犬夜叉を優しく見つめた。





その笑顔に、夢の中の泣いていたかごめ、睨み付けた桔梗の顔が消えていく。





「やっぱりかごめは凄いな・・・」






犬夜叉は愛おしそうに、優しくかごめの頬に触れる。





「ありがと・・・な・・・」





そう言った犬夜叉の表情は、今までに見たことのない優しい表情だった。




かごめはその表情を見て、嬉しそうに微笑んだ。





犬夜叉・・・。




人間にならなくてもいいから・・・私より長く生きて欲しい・・・・生き続けて欲しい・・・。




犬夜叉のこれからの時間に比べると、一緒にいれる時間は短いけど・・・。




私はもっと大切にするから。犬夜叉との時間を・・・。





だから・・・犬夜叉・・・あんたはそのままでいいから・・・。





”人間にはならない”





さっき犬夜叉の口からはっきり聞こえた言葉。





それが犬夜叉の本心なら・・・。




私はいいよ・・・。





犬夜叉・・・・。







二人は抱き合ったまま、動かなかった。





お互いの気持ちを、自分の気持ちを、考えるように、確かめるように、抱き合ったまま温もりを感じていた。









(終わり)