朝早くに家の玄関の戸を勢いよく開けて家に入るかごめ。



そのまま走るように階段を上がって、自分の部屋へと向かう。



バンッ



かごめは自分の部屋に入ると、荷物を床に放り投げる。



そして、ベッドに横たわると、両手で顔を覆った。



黙って帰ってきたけど・・・。犬夜叉、怒ってるかな・・・。



でも・・・。あの場所にいたくなかった。




かごめは溢れてきた涙を止めるように、顔を覆っている手に力をいれた。




あの光景を頭から消そうと思っても、忘れようと思っても、ますます鮮明に頭に浮かんでしまう。




桔梗の墓の前で見た犬夜叉の表情。優しい顔で何かを話しかけていた。



少し離れて見ていても、愛しい・・・その気持ちは伝わってきた。



まだ、犬夜叉の気持ちは桔梗にある。そうハッキリ分かってしまった光景だった。



分かっているって思っていたのに・・・。覚悟していたのに・・・。




やっぱり目の前で見てしまうと駄目だった。気づいたら井戸に走り出してた。



「もう、帰りたくない・・・・」



そうつぶやいて、かごめは涙を拭った。




「こら!!かごめ!!」




その声に、驚いて飛び起きる。




「犬夜叉?!」




犬夜叉が窓から部屋に入ってきて、睨み付けるようにかごめを見ていた。




しかし、すぐにかごめの涙に気づいて、表情が変わる。




「泣いてんのか・・・・??」




犬夜叉は床に座ると、下からかごめの顔をチラッと見上げた。




「何でもないから・・犬夜叉は関係ないから!!」




かごめはそう言って、布団にもぐり込んで、頭まで隠した。




「おい・・かごめ・・・?」



すっぽりと布団に包まれてしまったかごめを見ながら、立ち上がって上から声をかける。




「何かあったから泣いてんだろ・・・?」




犬夜叉がそう言いながら、布団の上からかごめの肩に優しく触れた。




バッ




その瞬間、かごめがもの凄い勢いで起きあがる。




「桔梗がまだ好きなんでしょ!だったら優しくしないで!触らないで!これ以上、私を・・・みじめ・・・に・・・」




かごめは涙で言葉がつまる。そして、子供のように泣き続けた。




犬夜叉は泣き続けるかごめを黙ったまま、見ていた。




そして、ふーっと小さくため息をつくと、かごめの手をそっと持った。




「かごめ・・・何でいきなりそんな事を・・・」




犬夜叉はかごめの手を優しく握りしめると、もう片方の手で涙を拭った。




「だって・・・お墓の前で・・・・優しい表情をしてた・・・」




かごめは時々、言葉をつまらせながら、ゆっくりと答えた。




「墓??・・・・ああ・・・桔梗の墓か・・・」




そう言うと、犬夜叉は目を細めた。




「ほら・・・あの時と一緒。桔梗の事になったら、犬夜叉は違う顔になる・・・」




かごめは目をそらして、手を離そうとする。




それをギュッと強く犬夜叉が握りしめた。




「ちょっと・・・・離してよ!」



かごめがそう言った瞬間、犬夜叉がかごめを自分にグイッと引き寄せた。




そして、かごめを犬夜叉が優しく包み込んだ。




「犬夜叉・・・こ・・・こんな事したってあんたの気持ちは分かってるんだから!!」




犬夜叉の胸で、もがきながら、かごめが言った。




「うるさい!」




そう言って、犬夜叉がかごめの唇を、自分の唇でふさいだ。




!?




かごめが驚いて、犬夜叉を突き放す。





でも、またすぐに強い力に引き寄せられて、抱きしめられた。




「これでも、俺の気持ちは桔梗にあるっていうのかよ!!」




犬夜叉が怒鳴る。そして、抱きしめられている犬夜叉の胸からは、鼓動が伝わってきた。




「だって・・・・」




かごめがそう言いかけると、また唇をふさがれる。




ぎこちない口づけ。でも、とても温くて優しい口づけ・・・。




犬夜叉の想いが流れ込んでくる。




自分を愛しいと想ってくれている・・・。愛しいと伝えているような口づけ。




ゆっくりと離れると、犬夜叉が恥ずかしそうに顔をそらした。




「まだ・・・分からねぇのか!?」



顔をそらしたまま、犬夜叉が言った。




「ううん・・・分かった」





かごめは優しく微笑んだ。




「あと・・・な・・・。俺は桔梗に伝えに行っただけだからな・・・好きとかって事じゃねえからな!」




犬夜叉はそう言うと、腕を組んで少し顔を赤らめた。




「何を伝えに行ったの??・・・」





かごめが犬夜叉をじっと見つめた。




「言えるか!」




犬夜叉はバッと立ち上がると、窓から出て行った。




「ちょっと、犬夜叉!」




かごめも立ち上がって窓から外を見たときには、もう犬夜叉の姿は見えなかった。




「ったく・・言えるかよ・・・」




犬夜叉はボソッとつぶやきながら、井戸へと向かった。








桔梗・・・俺はかごめと生きていく。



もう、お前の傍にはいれない。



でも、絶対にお前のことは忘れねぇ・・・・。



お前にこんな事、頼むのもおかしいかもしれねぇけど・・・。



守ってやってくれよ・・・。かごめを・・・・。




見守ってくれよ・・・。



頼むよ・・・・。




桔梗・・・・。





あの時、墓の前で桔梗に頼んだとき・・・・桔梗の笑顔が浮かんだ。





そして、聞こえたんだ・・・・。




優しい桔梗の声が。





「しっかり守ってやれよ・・・」





そう、確かに・・・・聞こえたんだ・・・・・。










(終わり)