「これから・・・」



第1話



吹きつける風が温かく感じるようになった。



「んー良い天気!」



伸びをしながら、かごめが丘の上から下を見下ろす。



「あ、犬夜叉ー!」



かごめは下から上がってくる犬夜叉を見つけて、手を振りながら名前を呼ぶ。





「犬夜叉・・・?・・・」




かごめは犬夜叉の表情を見ると、振っていた手を止めて表情を曇らせる。





「話がある・・・」




犬夜叉はそう言うと、かごめの横に座った。





「・・・何・・?」




かごめは不安を感じながら、犬夜叉を見る。






「・・・奈落を倒したら・・・・かごめは自分の世界に帰るのか・・・?」





その言葉に、かごめの表情がこわばった。





自分でも考えたくなくても、考えてしまっていた事・・・・。





奈落を倒したら・・・・私はどうするの??どうしたいの??





いつも最後には答えが出なかった。





「分からない・・・でも、犬夜叉とみんなと離れたくない・・・・」





かごめはうつむいたまま答える。






「・・・・俺は帰った方が良いと思う・・・」





かごめはそれを聞いて、バッと顔を上げる。






「それが・・・一番良いと思う・・・」





犬夜叉はもう一度そう言うと、かごめの顔をじっと見つめた。





「・・・・一緒にいたら駄目なの・・・?」





かごめが犬夜叉の衣の裾をギュッと握って聞いた。






「駄目とかじゃねえ・・・ただ、向こうの世界には大事な人がいるだろ・・・?」






かごめはそれを聞いて、家族や友達を思い出す・・・そして黙ったまま頷いた。





「でも・・・犬夜叉と離れたくない・・・・」





かごめはそう言って、ギュッと犬夜叉にしがみつくように抱きついた。









「これから・・・」



第2話



カーテンから差し込む光で、かごめは目を覚ます。




「・・・また・・・あの夢・・・」




かごめは起きあがって、いつ間にか流れていた涙を拭う。




この夢を見始めたのは半年も前から・・・・。いつも同じ所で目が覚める。




犬夜叉って誰・・・?自分の世界って・・・?





夢なのにとても鮮明に頭に残っている。





「あっ・・・もうこんな時間!支度しなきゃ!」





かごめはふと時計を見て、慌てて着がえ始める。




ドタドタと階段を下りて、洗面所へ向かい支度を終えると、玄関へと走る。





「もう、時間ないから行くね!お母さんにそう言っといて!」





かごめはちょうど、トイレから出てきた草太にそう言うと、飛び出すように家を出た。





「うわ〜遅刻しちゃう!」





かごめは時計を見ながら、走る。






『待ってる・・・・ずっとお前を・・・』




!?




急に頭に響くように聞こえた声に、立ち止まるかごめ。





「何??今の・・・」





かごめはキョロキョロと周りを見渡す。でも誰もいなかった。





「気のせい・・・?」





でも、その声は聞いた事があるような・・・・そして胸に響く声だった。






「わ〜急がなきゃ!!」





少し考えた後に、思い出したように走り出すかごめ。






走りながら、犬夜叉と自分が呼んでいた男の子の顔が頭から離れない。






「あっ!・・・あの声は・・・夢で聞いた声・・・犬夜叉っていう人の声だ・・・」





かごめは足を止めて、階段の下から神社を見上げる。





「あっ・・・」





誰かが階段の上から、自分を見ているように見えた。




でも、その姿はすぐに消えてしまった・・・。





「誰なの・・・?・・・」




かごめは、その場所を見つめたまま、胸を押さえる。




鼓動が速くなって、かすかに体が震えていた。





会いたい・・・。




誰に?・・・会いたいのか分からないけど、そんな気持ちが溢れてきた。








「これから・・・」



第3話



少し見続けた後に、かごめは階段を上り始める。



そして、いつの間にか御神木の前へと向かっていた。



「・・・・・・・」




御神木を見上げると、近づいて木の幹に耳をあてる。





とても温かい・・・。




「あれ・・・・?・・・」




ふと下に目をやると、かごめは根に近い土の中に何かが埋まっているのを見つける。。




かごめは半分土に埋まって物をそっと土の中から取り出した。





「何だろ・・・これ・・・」





かごめは取り出した物を手に取って少しの間、見つめるとそれをハンカチに包んで、カバンへと入れた。





「こりゃ、かごめ!学校はどうした?」





その声に、かごめが驚いて振り返る。




「お爺ちゃん・・・ああー!そうだった、遅刻だー!!」




かごめは慌てた様子で、走って学校へと向かった。





「やれやれ・・・」




お爺ちゃんは御神木を見上げると、御神木に話しかける。




「・・・会いたいのか・・・?・・・でも・・・お前の魂は一体、どこにあるんじゃ・・・」




そう言うと、少し小さくため息をついて、御神木からゆっくりと離れる。




御神木は光と風を受けながら、さわさわと静かに揺れる。





『俺は此処にいる・・・・』





その声は、葉の揺れる音にかき消されるように消えた。









「これから・・・」



第4話



バタバタッ




慌てて、教室へと向かうかごめ。




そーっと外から教室の中を見ると、HRが終わった後らしく、先生はいなかった。





「おはよう」




かごめは教室へ入ると、自分の席へと向かう。





「かごめ、もうHR終わっちゃったよ」






友達の絵里が、席に座ったかごめに近づく。





「うん・・・ちょっとね」




かごめはカバンから教科書を取り出しながら答えた。





「あ・・・・」




その時、ハンカチにくるまれた物が、カバンの中から床に落ちる。




「何これ・・・」




絵里が拾うと、それを不思議そうに眺めて、かごめに渡す。





「うん・・・何か家の御神木の根本に埋まってたの」




かごめは絵里から受け取ると、かごめもじっと眺めた。




「あ・・・ちょっと貸して」




絵里が、手を差し出す。





「え・・・うん」




かごめが渡すと、絵里は周りに付いて、固まっている土を丁寧に取り除く。




「あっやっぱり」





絵里はそう言うと、それをかごめの手のひらに、そっと乗せた。





「あ・・・これって・・・矢尻・・・?矢の先に付ける・・・」





かごめは土が綺麗にはがれて、形を現した矢尻を見つめる。





「根本に埋まってたって事は、かなり古いんじゃない??あっ・・・またねっ」





絵里は教室に入ってきた先生を見ると、自分の席へと向かった。





帰ったら、お爺ちゃんに聞いてみようかな・・・。





かごめは矢尻をまたハンカチに包むと、それをカバンに入れた。






見たことが無いはずなのに、何故か矢尻が懐かしく感じた。









「これから・・・」



第5話



放課後、かごめは急いで帰る支度をして、教室を出る。



今日は1日中、矢尻の事が気になっていた。



「お爺ちゃん、いるかな・・・」




かごめは急いで家への階段を上る。




「おお・・・かごめ。お帰り」




階段を上ると、お爺ちゃんが葉をほうきで掃きながら、かごめに声をかける。





「あ・・・お爺ちゃん!!これ見てくれる??」




駆け足でお爺ちゃんに近づくと、かごめはカバンの中を覗き込んで、ハンカチに包まれた矢尻を取り出す。




「・・・これは・・・どこで・・・ちょっと見せてくれるか?・・・・」




矢尻を見て少し驚いた様子でかごめに聞くと、手を差し出す。




「・・・御神木の根本に埋まってたんだけど・・・」





かごめはお爺ちゃんに矢尻を渡すと、真剣に矢尻を見ているお爺ちゃんをじっと見つめる。




「これは・・・・」




お爺ちゃんはそう一言つぶやいて、黙り込む。




「これは??」




かごめは黙り込んでしまった、お爺ちゃんの顔を覗き込む。




「いや・・・これは・・・わしが預かっておく」




そう言うと、お爺ちゃんはそのまま家へと入っていった。




「ちょっと、お爺ちゃん!」




かごめも後を追うように、家へと入る。






「ねえ・・・何なの??それ・・・教えてよ!何か懐かしく感じて・・・気になるの!」




お爺ちゃんの後を追いながら、かごめが少し大きな声で聞いた。




お爺ちゃんは、その言葉に足を止める。




「今は言えん・・・お前が思い出すまでは・・・そういう約束なんじゃ・・・」




そう言うと、お爺ちゃんは自分の部屋へと入っていった。





「何よ・・・思い出すって・・・・」





何故か気分が落ち着かない。




モヤモヤして、イライラして、頭の中がぐちゃぐちゃになる。




思い出す・・・・何かを忘れてる??大事な何かを・・・・・。