ゴロゴロ・・・


だんだんと雷の音が近づいてくる。



「やべぇな・・・」



乱馬は空を見上げながら、足早に家へと向かう。



ポツ・・・ポツ・・・



空から少しずつ雨が降ってくる。




「うわ・・・どっかで通り過ぎるまで待つか・・・」



乱馬は近くにあった店に入ると、飲み物を注文して席につく。



座って外を見ると、雨が強くなり土砂降りになっていた。



当分止みそうにないな・・・・。



乱馬はジュースを飲みながら、そのまま外をぼーっと眺めていた。




「あかねって本当、おかしいよね・・・」



その時、後ろの席から聞こえてきた名前に反応する乱馬。



少しの壁と植木でさえぎられていて、誰が話しているのか確認できなかったが、乱馬はそのまま聞き耳をたてる。




「乱馬くんと本当に何にもないのかな・・・」



「一緒に住んでるんだから、キスぐらいしてるでしょ・・・」



してないよ・・・・。



乱馬が心の中でそう思うと、ふーっと息を吐く。



「どうだろ・・・してなさそうだったよ」



「私だったら我慢できなくて乱馬くんを襲っちゃうかもー!」



え・・・。



それを聞きながら赤くなる乱馬。




「やだーいやらしー!」




キャーキャーと盛り上がっている女子生徒達からそっと離れる乱馬。




「何か女子って怖いな・・・」




ぼそっとつぶやくと、少し離れた席に座って、頬杖をついて降り続く雨を見る。






その時、あかねが窓の外を走って通り過ぎると、店へと入ってきた。



うわ・・・やべ・・・。



とっさに体を伏せて隠れる乱馬。



あかねは飲み物を買って、さっき盛り上がっていた席に座る。



あ・・・あいつら同じクラスの女子だったのか・・・。




っていうか、何で俺が隠れないといけないんだよ・・・・。




けど、何か居づらいし帰るか。濡れるの嫌だけど・・・。




乱馬は体を起こすと、ジュースを飲み干して席を立つ。




あかねに見つからないように店を出る。



「あ・・・乱馬くん!!」



その時、友達の一人が乱馬に気づいて、声をかける。



うわ・・・。見つかった・・・。




「あ・・・いたのか・・・。じゃあ・・・」



乱馬はそう言って、そのまま出ようとする。




「まだ雨降ってるよ・・・こっちおいでよ」




あかねの友達の、ゆかが乱馬に駆け寄ると、席へと乱馬を連れて行く。




「座って、座って・・・」



乱馬を座らせると、ゆかはニコニコと笑いながら乱馬に近づいてじっと見る。



「な・・・何だよ・・・」



乱馬が少し困った表情をして離れると、あかねをちらっと見る。





あかねは乱馬を少し見て、目をそらした。





「乱馬くんって、あかねの事どう思ってるの??」





離れる乱馬にまた近づいて、じっと見るゆか。




「ちょっと・・・!ゆか!」



あかねが赤くなって怒る。





「まあまあ・・・この際、ハッキリしてもらわないと・・・」




ゆかがそう言うと、周りの友達も期待した目で乱馬を見る。



「どうなの乱馬くん!」




「そうよ、男ならハッキリしなさいよ!」




乱馬は困った表情で、うつむく。








「・・・・俺、帰る・・」




そう言うと、乱馬は立ち上がって、店を飛び出すように出た。




「乱馬!」



あかねも乱馬の後を追った。




「ちょっと意地悪しすぎたかな・・・」




ゆかが笑いながら言った。






「ちょっと、乱馬ってば!!」




土砂降りの中、あかねは乱馬を追いかける。




名前を呼んでも振り返らない乱馬。



「乱馬ってば!!」




あかねは乱馬の手首を掴む。




「・・・何だよ・・・」




あかねは、振り返らない乱馬を後ろから見つめる。




いつもは自分より高い背も、今は同じ目線に頭がある。




「あの・・・さっきの気にしないでよ・・・」




あかねがゆっくりと手を放すと、乱馬にぼそっと言った。




「・・・・ああ・・・」




そう一言答えると、ゆっくりと歩き始めた。



ゴロゴロ・・・



ドーーーン・・・



「きゃっ!!」




近づいていた雷がすぐ近くで鳴り始める。



雷が苦手なあかねは、その場にうずくまった。




「大丈夫かよ・・・」



乱馬があかねの元へと駆け寄ると、あかねの手をとって走り出す。




「ちょっと・・・乱馬・・・!」



引っ張られながら、あかねも走る。



そのまま走り続けて、家へと向かう。




「うわ・・・びしょびしょだな・・・」



家に着くと、乱馬が服をしぼりながら言った。




クシュッ・・・




あかねがクシャミをして、少し体を震わせる。



「風邪ひくぞ、風呂入ってこいよ」




「あ・・・うん」



あかねが風呂場へと向かう。



「あ・・・タオルだけとらせて」




乱馬が先に風呂場に入ると、タオルをとって出ようとする。




それをあかねが乱馬の服の裾を持って、止めた。




「ん??」




乱馬が裾を持ったまま、黙っているあかねを不思議そうに見る。




「あの・・・風邪、ひいちゃうから乱馬も入ったら?」




「は!?」




乱馬がそれを聞いて真っ赤になる。




「誤解しないでよ!風邪ひかれても嫌だし、こっち見ないって約束してくれたら」




あかねがもごもごと恥ずかしそうに言った。



クシュッ・・・




その時、二人が同時にクシャミをする。




「・・・・・本当、このままじゃ風邪ひいちまうな・・・」




乱馬がそう言って、服を脱ぎ始めた。




「乱馬・・・絶対に見ないでよ・・・」



あかねがボソッと言った。



「ばーか、お前の裸なんか興味ねえよ!」



乱馬がそう言って、先に入っていった。




あかねは服を脱ぎながら、自分の言った事に今更ボッと赤くなる。




私・・・もしかしてとんでもないこと、言った??




あかねは、そのまま立ちつくす。




少し考えて、戸を開けようと手をかけても、なかなか入ることができなかった。





「なあ・・・俺もう出るから、入れよ」




なかなか入ってこないあかねに気を使って、乱馬が出てくる。




「え・・・あ・・・うん・・・」




お互いを見ないように、入れ替わる二人。




「・・・・ごめんね。変なこと言っちゃって・・・」




あかねはお湯につかりながら、乱馬に言った。




「別に・・・」



乱馬が髪をタオルでふきながら答える。




「そうよね・・・私なんか興味ないもんね・・・・」




あかねはそう言うと、お湯を手ですくって、バシャっと顔にかける。




ガラッ



「ばーか!」




その時、乱馬が戸を開けて、あかねに一言そう言った。




「きゃっ!ちょっといきなり開けないでよ」




あかねが慌てて体を沈めて、お湯に首までつかる。




「お前、自覚なさすぎ・・・」




そう言うと、戸を勢いよく閉めて出て行った。









あかねは一瞬の出来事に少しの間、閉められた戸を驚いた表情で見ていた。







「ったく・・・・俺がどれだけ抑えていると思ってんだよ・・・」



乱馬は自分の部屋に向かいながら、大きなため息をつく。





その頃あかねは、乱馬の言葉の意味を考えながら、一人で微笑んでいた。










(終わり)